運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
鐘楼からの景色を堪能した後も、ふたりで街をぶらぶら歩きながらベネチアングラスのお店を覗いたり、本場のジェラートを食べたり。楽しい時間はあっという間に過ぎ、気が付けば夕方になっていた。
天河さんには『今日一日付き合って』と言われているけれど、徐々にその終わりが近づいてきたのを感じて、寂しくなる。
今日が終わったら、私たち、どうなるんだろう? 私はいずれ日本に帰国するけれど、天河さんは? また、どこかに放浪の旅に出てしまう?
せっかく運命的に出会っても、ずっと一緒にいられないのはつらいよ……。
「どうしたの? 泣きそうな顔して」
気持ちが沈んで俯きがちに歩いていた私に気付いて、天河さんが長身を屈めて顔をのぞき込んでくる。
「あの……。いえ、やっぱりいいです」
正直に今の心境を話そうかとも思ったけれど、楽しいデートの雰囲気を壊したくなくて、私は無理に笑った。
しかし天河さんは私の心の中を見透かしたかのように、つないでいた手にギュッと力を込めて言う。
「大丈夫。俺も同じ気持ちだから」
安心させるような笑みを向けられ、胸がきゅんと音を立てた。
同じ気持ち……。天河さんも、私と離れたくないって、思ってくれているのかな。
問いかけるように彼の麗しい横顔を見つめていると、彼がふと夕陽を反射してオレンジ色にきらめく水路のほうを指さした。