運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「な、なんか、周りのゴンドラが減ってきましたね?」
私は話題をそらし、天河さんのぬくもりだけに思考が支配されそうになるのをごまかそうと試みる。けれど、その話題はむしろ逆効果だった。
「そりゃ、ゴンドリエーレに俺がそう頼んだからね。可愛い恋人と静かに愛を語り合いたいから、ほかの船を避けるように運航してほしいって」
可愛い恋人……。そうやって他人に公言されるのは恥ずかしいけど、その言葉自体はすごく嬉しいな。
「私、天河さんの恋人になれた……って思っていいんですか?」
波の音に負けて消え入りそうな、自信のない声で尋ねてみる。
すると天河さんは私の耳の脇にスッと手を差し入れ、“俺の目を見ろ”と言わんばかりに顔を固定して、真剣な眼差しを向けてきた。
「俺は、むしろそれ以上になりたい」
「え……?」
「今まで、人並みに恋愛はしてきたつもりだった。でも、こんな気持ちは初めてなんだ。……きみを、永遠に俺のものにしたい」
「天河さん……」
私は金縛りにあったように、彼の薄茶色の瞳から目が逸らせなくなっていた。心臓は早鐘を打ち続け、苦しいくらいに彼への愛しさが募っていく。