運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
頭の中でぐるぐる思いを巡らせる私に、天河さんが大人の笑みを浮かべて先にフォローしてくれた。
「大丈夫。きみが初めてなのはなんとなくわかってたから、たっぷり時間をかけて愛してあげるよ。痛い思いなんか絶対にさせない」
天河さんって、読心術があるのだろうか……。それとも私が顔に出過ぎなのかな。
「めんどくさくないですか……?」
思考を読まれた恥ずかしさはとりあえず置いておいて、気になっていることをそのままぶつけてみる。
「何言ってるの。逆に嬉しいよ? 一度もほかの男に触れさせることなく、俺だけをその体に刻みつけてやれるんだから」
そう言って一瞬片側の口角を上げた彼の笑みに、かすかな違和感を感じた。
“刻みつけてやれる”……って、なんか、ちょっと、今までの物腰柔らかい彼の口から出る言葉ではないような。いや、考えすぎか……。
なんとなく腑に落ちないものを感じつつも、ゴンドラで元の船着き場に戻って、私たちは一緒に彼の泊まるホテルに向かうことになった。
夕闇に染まるその道すがら、私は緊張でいっぱいになりながら、胸の中で父に宣言していた。
お父さん、ゴメンね。美琴は自分の好きになった相手と結ばれます。
悪魔なんかの生贄(いけにえ)には、なりません――。