運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「えっ……!?」
ぎょっとして、思わずガバッと上半身を起こした。
ちょ、ちょっと待って! 天河さんって、苗字じゃなかったの? お互いの自己紹介をしたときに、フルネームを名乗った私に対して“天河です”ってそれしか言わなかったから、てっきり天河ナントカさんなんだとばかり……!
それに、彼の職業は“放浪の画家”でしょ? 父の言っていた人はドクターだ。
「私のフィアンセなら職業は外科医のはずです!」
「だから、俺がそうなの。絵描きだなんて咄嗟に考えた出まかせだよ」
気だるそうに身を起こし、軽い調子で説明を続ける彼に思わず声を張り上げる。
「どうしてそんなウソを!」
私はすっかりパニックだ。だって、運命的に出会って、ハジメテを捧げた相手が、あろうことか“白衣の悪魔”本人だったなんて、笑えない冗談だよ!
「きみを迎えに行くよう頼まれたんだよ、きみのお父さん……神鳥院長に。最初は秘書に行かせようとしてたけど、他の病院から移ってきたばかりでまだ患者を抱えてない俺の方が今は自由に動けそうだったし、俺自身、本人が行って口説いた方が早いって思ったしね。だから、宿泊先のホテルの場所を聞いてすぐ飛んできたってわけ」
悪びれもせず淡々と語る姿に、さあっと血の気が引いていく
こ、こんなの……嘘だ。悪夢だ。陰謀だ。私……まんまと悪魔の誘惑に乗って、身を売り渡しちゃったってこと……?