運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「生憎、全部本心なんだけど?」
「……それはどうも」
「はは、全然嬉しくなさそうだね。……って、ちょっと待って。顔、よく見せて」
「え、な、なんですか急に!?」
玄関にいる彼が、急にずいっと顔を寄せてきて、私の顔を両手で包み込む。
そして真剣な瞳で観察するようにじっと見つめられ、心臓がどっくんと飛び出しそうになる。ちょ、ちょっと! お母さんが見てる――!
キスでもされるんじゃないかと身構えた私だったけど、耳に入ってきたのは予想外のひと言。
「……美琴ちゃん、もしかして二日酔い?」
「えっ?」
ど、どーしてそれを……。
「顔がちょっと火照ってて、目の下に薄ーくクマができてる。それと、ほんの少しだけど、お酒の香りが……」
カタチの良い鼻をクン、と鳴らしてそんなことを言う先生。私は一気に恥ずかしくなって、口元を押さえる。
「う、嘘! ごめんなさい! シャワー浴びたし歯も磨いたのに!」
「ああ、大丈夫。口からじゃないよ。人間って、飲み過ぎると皮膚からもお酒の匂いがすることがあるんだ。っていうか、職業柄俺がにおいに敏感すぎるっていうのもあると思うから、全然気にしなくて平気」