運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「美琴さんのことは、僕が責任をもってお預かりします」
「よろしくね、先生」
「じゃあ行こうか」
紳士的に手を差し伸べられ、私は仕方なくその手を取った。
自分で決めたこととはいえ、悪魔と二人きりで出かけるなんて、大丈夫なんだろうか……。
“彼をもっと深く知りたい”と思っていたはずが、しょっぱなから悪魔の色香にあてられて、すでに自信喪失……。
藍澤先生に手を引かれて外に出ると、家の前に一台の車が止まっていた。
流線型のフォルムに、鮮やかなブルーが目を引くスポーツカー。サイドミラー近くで輝く跳ね馬のエンブレムで、高級なイタリア車だとわかった。
藍澤先生が助手席のドアを開けてくれ、革張りのシートに腰を下ろす。隣に彼も乗り込んでドアが閉まると、一気に高まった密室感に緊張が走った。
とうとう悪魔の車に乗ってしまった……。もう逃げられないわよ、美琴……。
「そういえば昨日ってさ、誰と一緒に飲んでたの?」
住宅街を走り出しながら、藍澤先生が聞いてくる。