運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「その先生によると、藍澤先生は尊敬に値する素晴らしいお医者さまだそうですけど……あなたの言動を見る限り、私にはとてもそうは思えません」
私は今の心境を、素直に打ち明けた。
今日のデートでは、本音で彼にぶつかろうと決めている。そして、彼の反応を見ながらじっくり考えたい。
藍澤先生は本当に悪魔なのか。……それとも、このまま惹かれてもいい相手なのかを。
「はは、手厳しいね」
特に表情を変えず、私の言葉を流す藍澤先生。軽くあしらわれた感じにムッとしつつ、私はストレートな質問をぶつけた。
「まず、確認ですけど……私と結婚したいのは、出世のためですよね?」
「……出世?」
思い当たるふしがない、という顔をする藍澤先生だけど、私は冷たく言い放つ。
「とぼけなくてもいいです。この間の副院長室での早苗先生とのやりとりを見てればわかりますから」
「あー、ちょっと待って。あれはまた別の事情で」
「なんですか別の事情って」
すかさず突っ込んだ私に、藍澤先生はわざとらしい笑みで適当なことを言う。
「ほら、医者って守秘義務あるから」
「誤魔化さないでください! 私は真剣に聞いてるんです!」
「……そうだよね。わかった。じゃあ、正直に言うけど」