運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「俺たちの結婚のこと、そう呼んだらどうかな? ただの政略結婚じゃない。お互い、相手に運命を感じてるわけだから」
「わ、私は別に……」
もごもごと否定しつつも、“運命的政略結婚”という響きに心が動かされる自分もいた。
政略結婚の相手が、運命の人。そんな奇跡、ドラマか映画の中にしかなさそうだけど、もし本当にあるなら……。
変な期待を抱きそうになって、ハッと我に返った。いかん、また悪魔のエサだ。見るな、嗅ぐな、食いつくな。
「今感じてないなら、これから感じさせるまでだよ。というわけで、今日のデート、覚悟しておいて?」
「え……」
覚悟って……一体なんのですか?
あまりに色っぽい声で言うので、先日真帆に言われたようなピンク色の妄想がふくらむ。
藍澤先生と温泉と浴衣……ダメだ、その単語の羅列だけで18禁な気がする。
「美琴ちゃんが運命の相手を“待つ”タイプなら、俺は自分の手で“引き寄せる”タイプだからさ。どんな手を使っても、きみを振り向かせて見せる」
勝手に“覚悟”の意味をはき違えてうろたえていた私だけれど、そう断言した藍澤先生の横顔には自信が溢れていて、また違う意味でドキッとしてしまった。
いつもは軽くて、女慣れしている感を全面に出してくるくせに、時々そうやってシリアスモードになるの反則だよ……。
照れ隠しに車窓を眺めると、いつの間にやら車は高速に入っていた。
うう、もう後戻りできない……。
これからどんなデートが待ち受けているのか、怖くて不安な反面、不思議と胸は高鳴っていた。