運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「はぁ~……」
体を洗って、いざ露天風呂につかると、思わず大きなため息がこぼれた。
まだ雨が降っているせいか、他のお客さんは内風呂に集中していて、露天風呂には私一人。貸し切り状態で贅沢だし、この雨も頭を冷やすのにちょうどいい。
それにしても……。
「……このあとどうしよう」
ぽつりと呟いて、露天風呂のごつごつした岩に背中を預けた。
たぶん、部屋に食事が運ばれてきて、箱根の味覚を堪能して……じゃ、帰りましょう!なんてこと、許されるだろうか。
あの部屋、立派なベッドあったしなぁ……。うう、離れに帰るのがいやだ……。
心配事ばかり考えていたら長湯になってしまい、すっかりのぼせてしまった。
あまり遅いと心配かけちゃうよね……。ぼうっと火照ったままの頭で思いながら、脱衣所で浴衣に着替えた。
若紫色の生地に、大きな菊と桜があしらわれていて、なかなかかわいいデザインだ。それから脱衣所にあった鏡で身だしなみを整え、急いで離れに戻る。
「ごめんなさい、お待たせし、て――」
ふすまを開けて部屋に足を踏み入れた瞬間、視界ぼんやりとかすんで揺らめいた。
あ、やばい。なんかくらくらする。やっぱりお風呂入りすぎた……?