運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「おかえり……って、大丈夫?」
座椅子でくつろいでいた浴衣姿の藍澤先生が、私の様子がおかしいことに気付いて立ち上がる。
「すみません、ちょっと横に……」
「歩ける? 俺につかまって」
肩を貸してくれる藍澤先生のご厚意に甘えて、よろよろとベッドまで移動した。倒れ込むように横になると、彼がすぐに布団をかけてくれる。
「すいません……」
「もともと二日酔いで体調良くなかったから、お風呂入って悪化しちゃったかな……。ごめんね、無理やり遠くまで連れ回して」
ベッドの傍らで身を屈め、私の体温を計るように手のひらを頬や首筋に当てる藍澤先生。
今度ばかりはドキドキよりも、お医者様がそばにいるという安心感がそれを上回った。
「無理やりなんかじゃないです……私が、先生をもっと知りたかったから……」
なんとなくだけど、“病人”になった私を前にした彼なら“悪魔”にならない気がして、自然とそんな言葉が口からこぼれた。藍澤先生は驚いたように、目を見開く。
「……何か話してくれませんか? 藍澤先生が“悪魔じゃない”ってことを、信じさせてくれるような話。いつも甘い言葉ばかりだから、何か誤魔化されてるように感じちゃって……」
「美琴ちゃん……」