運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


……ああ、言えた。いつも、私の言いたいことを説明するより前に心を乱されてしまうから、反発するようなことばかり言っちゃうんだよね。

だけど、そう……きっと、これが本心だと思う。私だって、いちおう。あなたには一度、運命を感じてるんだから……。


「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけど……何を話したらいいかな」


甘い言葉や軽口はスラスラと言えるくせに、真剣に悩み始める藍澤先生がおかしかった。私はクスッと笑って、思いついた質問を投げかける。


「どうして医者になろうと思ったのか、とか」

「……またそれは全然色っぽくない話だね」

「それでいいんです。そういうのが聞きたいんです」


そう言った私を、藍澤先生はなぜか珍獣でも見るような目で見つめた。

相手の内面を知りたいと思うのがそんなに不思議なことかな? まさか、女の人にこういう質問をされた事がないとか?

……いや、今まで数え切れないほど彼女がいただろうからそれはないよね。

ようやく口を開いた彼は、言葉を選びながら自分の身の上を語り始める。



< 82 / 166 >

この作品をシェア

pagetop