運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「……今の、カッコよかったです」
本人には聞こえなくてもいいや、と口元を布団で隠しながら小さな声で言ったけど、藍澤先生は地獄耳らしい。すかさず美麗な顔をずいっと顔を近づけ、問い詰められた。
「今、なんて言った? 俺のこと、カッコいいって……?」
「……空耳じゃないですか?」
「そういう嘘つくんだ。ふーん……」
拗ねたように下唇を突き出し、冷たい瞳で私を見下ろす藍澤先生。
あれ? その顔……天秤がまた一気に悪魔の方に傾いてきたような……。
「ところで美琴ちゃん、具合は?」
「あ、だいぶよくなりました。そろそろ起きれそう……」
ベッドに手をついて、よいしょ、と体を起こそうとしたはずが……。その途中でなぜかバサッと布団を剥がされて、中途半端に上体を起こした私の上に、藍澤先生が覆いかぶさった。
紺地に細かい麻の葉模様が描かれた、シンプルで古風な浴衣が目の前に揺れる。しかし視界を覆ったのはそれだけではなくて。
「あ、あの……っ」
浴衣の胸元がはだけて素肌の胸板ばっちり見えてる……! め、目のやり場が……!