眠らせ森の恋
「そうですね。
 しかも、その年は梅雨もなんだか蒸し蒸しして、編むのも暑かったのに」
と言って、阿呆なのか、と言われる。

「お父さんは、ああ、ありがとう、ありがとう、と心ない返事を繰り返し、ずっと箪笥にしまっています」

 きっと、シンプルライフとか言って、ごっそり捨てたものの中にあるに違いありません、と言うと、

「いや、娘にもらったものは、もったいなくて身につけられないのかもしれないぞ」
と慰めてくれるが。

「そんな父ではありません。
 貴方もそのうちわかります」

 だって、その大事な娘も、こうして、簡単に貴方に譲り渡してしまったではないですか。

 私の意見も聞かずに、ご機嫌で、と思っていた。





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