眠らせ森の恋
「すみません」
と苦笑いして言うと、キッチンカウンターに戻った奏汰は、適当にグラスにリキュールと市販のオレンジジュースを注ぎ、呑んでいた。

 ……自分のは適当なんだな。

 やはり、相当お疲れらしい、と思ったつぐみは、目の前のローテーブルにグラスを置いて立ち上がる。

「編み物すると、肩こるでしょう?
 ツボ、押しますよ」
と両手でツボを押す仕草をしながら、笑って見せた。

 この間、眠らせるためのツボを調べているとき、肩こりに効くツボも見ていたのだ。

 そうか、すまん、と言った奏汰は、
「じゃあ、俺もあとで押してやる」
と言う。

 妻のために疲れているのにカクテルを作ってくれる夫。

 夫のためにツボを押す妻。

「なにか思い合っている夫婦のようですね」
としみじみ言うと、

「違うのか……」
と奏汰が呟いていた。







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