眠らせ森の恋




「お前、今度はなにをした」

 小会議室で、打った書類の読み合わせをしていると西和田が言ってきた。

 は? とつぐみは顔を上げる。

「社長が機嫌が悪い。
 なにをした?」

「靴下編んで差し上げただけですよ」
と言うと、

「……セーターじゃなかったのか」
と言う。

 うーん、と唸り、つぐみは言った。

「ちょっと嬉しそうな感じだったんですけどね。
 靴下だったので、手抜きと思われたんですかね?」

「いや、まあ、編むだけで、立派だとは思うが……。

 好きでもない女からもらって一番困るのは、手編みだが、好きな女からもらったら、とりあえず、嬉しいからな」
と言われ、

「えっ?
 じゃあ、社長、困ってるんですかね?」
と身を乗り出してしまい、阿呆か、と言われる。
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