過保護な御曹司とスイートライフ
辰巳さんに少しだけ待っていてもらって、荷物の整理をする。
この部屋にきたときに持ってきたバッグを持ち玄関を出ると、ふたつのバッグを辰巳さんが持ってくれるから、そのうしろをうつむきながら歩いた。
成宮さんの告白に応えるつもりは最初からなかった。
だって、私は辰巳さんから逃げられないし、拒絶もできないから……いくら成宮さんに恋をしていたって好きだなんて言えない。
お世話になったのだからきちんと挨拶くらいはしたかったけど……辰巳さんがこうして出てきた以上、ここに留まるほうが迷惑になってしまう。
それがわかったから、辰巳さんに大人しくついて帰ることにした。
好きだって伝えられなくても……せめて、成宮さんの迷惑にはなりたくないから。
エレベーターホールでも、駐車場までも、辰巳さんも私もなにも話そうとはしなかった。
ただ静かに歩き、辰巳さんが車を止めたというマンション前の道路に向かう。
外はもう暗く、早咲きの桜の花びらがちらちらと道路の上を舞っていた。
空にはたくさんの星が浮かびあがり、今にもこぼれてきそうだった。
成宮さんの部屋のベランダからも、何度か星を眺めたことがあったな……と思い出す。
『今日、ISSが見えるって』
『ISS……国際宇宙ステーションでしたっけ』
『そう。せっかくだからベランダ出て見てみるか』
三月夜の外は思いの外寒かった。
うっかり薄着で出てしまった私たちは、ガタガタしながら見るはめになったことを思い出し、ふっとひとり笑みをこぼす。
『はは、おまえ鼻真っ赤』
『成宮さんこそトナカイみたいになってますよ。……あ、ISS』
『おー……すげーな。あれに人が乗ってるとか考えると人間ってすげーなって思うよな』
成宮さんといると、なんでもないこと全部がキラキラして楽しかった。
まるで、地上から見る流星群みたいに。
あの人はとても純粋で真っ直ぐだから、嘘がなくて、だから安心できたし、私も本音を晒せたのかもしれない。
マンションを振り返り……その景色を瞼に焼き付けてから、目を逸らした。
……さよならだ。