過保護な御曹司とスイートライフ
静かな返事をされ、カップを口につける直前で止めて、成宮さんを眺める。
コーヒーを飲む姿を見ながら、落ち着いた雰囲気を持つ人だなぁと感心する。
歳はやっぱり、私が最初に思った通り、二十代後半くらいだろう。
それなのに佇まいがしっかりとしていて、自信が溢れているように感じた。
頼りがいがあるっていうのは、こういう人を言うんだろう。
裏表なんてないみたいに明るくて、でも落ち着いていて……例えば、こんな人が恋人だったら。毎日はとても幸せなのかもしれない。
そんな風に考えながら見つめる先で、不意に成宮さんが私を見るからビクッと肩が揺れる。
成宮さんは少し言いにくそうな顔をしたあと、もう一度私に視線を合わせた。
「さっきの話だけど。ワケありっぽかったし、俺は損しねーしべつにいいかと思ったから」
「さっきの……ああ」
私がペラペラと聞いたことか、と思い出す。
『抱いてほしいって言われたら、全員抱くんですか? いくら頼まれたからってあんな、道に落ちてたような危ない女を善意で抱くなんて成宮さんこそ危機感が足りないんじゃないかと思います。そもそもそんな女に自宅同様に使っている部屋をバラすとか……』
あんな、いわば八つ当たりのような言葉にわざわざ答えてくれるなんて、律儀なひとだなと思う。
「〝損〟だと思われなかったならよかったです。好きでもなんでもないのにああいうことをするのは、面倒なんだろうなぁと思ってたので」
安心して少し笑うと、成宮さんは「損だなんて思ってねーよ」とハッキリと言う。
「普通、女に頼まれたらラッキーくらいに思うんじゃねーの。それでも、俺は誰でも抱くわけじゃないけど。俺だって自分の立場わきまえてるつもりだし。……ただ、初めてなら先に言っとけ」
〝立場〟……社会人としてということかな、と思っていると、私をじっと見ている成宮さんが続ける。