過保護な御曹司とスイートライフ


「言ったでしょ。私には二択しか思いつかなかったって。それに、私だって危険なのはわかってますし、だから金曜日だって気の弱そうな男性をターゲットに……」

「そうじゃなくて。協力してやろうかって意味」
「……協力?」

眉を寄せ聞いた私に、成宮さんがにっと口の端を上げる。まるでいたずらっ子みたいなそんな顔だった。

「どうせ〝イケナイこと〟するなら、もっとデカいことしてみてもいいんじゃねーの? あー……そうだな、一ヵ月くらい家出でもして俺の部屋にくるっていうのは?」

〝一ヵ月〟〝家出〟〝俺の部屋〟

成宮さんが出した単語が頭のなかをグルグルと回り、理解するまでに時間がかかった。

ダメだと思う。普通に考えて、そんなこと……。

成宮さんとは一度そういうことになっているし、こうして話していてもおかしな人ではないように感じるから、犯罪に巻き込まれるとかそういう可能性はそこまで大きくないのかもしれない。

それに、運転手さんつきの車に乗っているんだから立場のある人だ。社会的に問題になりそうな馬鹿なことはしないとも思うし。

でも、成宮さんの人柄うんぬんの前に、一ヵ月も家を空けてしまったら、両親は気付かないにしても辰巳さんはおかしく思うし、通報だってするかもしれない。

会社にだって乗り込んでくるかも。

不安要素は、瞬時に思いついたものだけでもたくさんあって、成宮さんの提案を受けるのは無理だと理性が告げる。

それでも……胸の中から溢れ出すワクワクが止まらなくて、初めての冒険を前にどうしょうもなくときめいてしまっていて。
気付けばうなづいていた。

「よし。決まりな」

無邪気なイタズラでも思いついたみたいな笑みを浮かべる成宮さんに、私も笑顔を返す。

きっと同じような顔をしていたに違いない。





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