過保護な御曹司とスイートライフ


社員用出入り口から入ったんだろう。

だから来訪時に鳴るチャイムが聞こえなかったのか……と納得していると、「おまえ、そんなこと言われて黙ってたのか?」と聞かれ、うなづく。

成宮さんが馴れ馴れしい態度をとるからか、隣から送られてくる矢田さんの視線が気になるけれど……無視するのもおかしいし、と口を開く。

成宮さんは副社長なわけだし、その立場から社員のことを心配してこんな風に話しかけてきた……って考えれば、そこまで不自然ではないかもしれないし。

「あの人が人を悪く言うのはいつものことなので」
「だからって、華がないだの平凡だのって……面と向かって言われたらさすがに傷ついたりもするだろ」

わずかに怒っているような口調に、どうしたんだろうと疑問を抱きながら答える。
そんなことを女性社員相手に平気で口にしてしまう社員がいることが悲しいのだろうか。

「初めて言われたときは、多少思うことはありましたけど……。誰が相手でもそういうことを言う人なんだなってわかってからは、そんなには。それに、華がないのも平凡なのも事実ですし」

見た目がどうのって言われたときには、さすがに傷ついたりもしたけれど、自分自身の外見が派手じゃないのは知っている。

だからそう言われても仕方ないと思って聞き流せたのだけど……成宮さんは気に入らなそうに顔をしかめて私を見た。

「平凡ってわけでもねーだろ。それなりに可愛らしい顔立ちしてるし、普段、無表情なぶん、たまに笑うと……その、あれだ。こっちが嬉しくなる感じだし」

「……ありがとうございます」

途中からバツが悪そうに表情を崩し、後ろ頭をガシガシかいた成宮さんに少し驚きながらお礼を言う。

一社員としてフォローしてくれてるんだなっていうのは分かっているのに、褒めてくれたのが嬉しくて胸がトクトクと喜びの音を叩き出す。

そんな胸に、今の言葉に意味なんてないんだからと言い聞かせていると、「それより」と成宮さんが話題を変える。

「今日の夕飯、なに?」


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