溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「匠さん、あがりました。使ってください」

「了解。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい――あ」

 真壁がすれ違いざま椿の額にキスを落としていく。にっこりと微笑んで脱衣室に消えた。そんな姿を椿はしばらくの間眺めていて、ようやく部屋に戻った。

(匠さん・・)

 ベッドに入り、キスされた額に手を置く。

 本当は唇にしてほしかった。好きだと言ってくれたのなら、唇でもよかったのに――そう思い、目をぎゅっと瞑る。

(わたしって、ホントにヤだな。厚かましい・・今の状態でも充分すぎるほど幸せなのに)

 ぼんやりと今日一日のことを思い出しているうちに、椿の意識はすっと消えていった。そしてふいに目を覚ました時には、カーテンが明るくなっていて、時計を見ると七時少し前だった。

(あ・・)

 そろそろ起きないと、と思った瞬間、スマートフォンのアラームが鳴り出した。それを止めてから思い出す。

(そうだった、通勤時間が半分くらい違うんだった。でも、二度寝したら今度は寝過ごしそうだし。ちょっと早いけど、起きるか)

 起き上がって着替え、洗面を済ませてキッチンに向かおうとしたら玄関が開く音がして驚いた。

「あ、椿、おはよう」

「おはようございます。匠さん、どこかお出かけだったんですか?」

 早朝から? と言いたげに首をかしげて問うと、真壁は爽やかな笑みを椿に向けた。

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