溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 椿の脳裏に山瀬の言葉が稲妻のごとく轟いた。

――留学経験もおありだし、もしかしたら日本人に興味がないだけかもしれないし、立場上言わないだけで、決まった人がいるのかもしれない。とにかく、想っても報われないから気をつけて。

 なにかが一つにつながったような気がした。だとしたら〝好きだ〟と言ってくれたあれはなんだったのか――

(うそ)

 そう喉の奥でつぶやくものの、どちらに対して言っているのか自分でもわからない。ただ激しく口の中が乾き、喉の痛みを感じた。

「タクミとは彼が留学中に知り合ったのだけど、グランパ関係でね。家族ぐるみのつきあいよ。お互いの結びつきは利益が大きいし、両家ともに、私たちの結婚に賛成していて楽しみにしているわ」

「・・そうですか。申し訳ございません、まったく知らなかったもので、大変失礼いたしました」

「あら、いいのよ。口の堅いタクミが会社の人にプライベートなことを話すとは思えないから。ただ、セクレタリーならコンタクトの関係で説明しているだろうって思ってしまって。こっちこそ悪かったわ」

「いえ、そんな」

「ねぇ、ツバキ、あなたおいくつ?」

「私の年ですか? 二十二です。もうすぐ、三になりますが」

「えー、若い!」

 若いというマリだって充分すぎるほど若く見える。西洋人は年上に見えがちだが、マリは二十代半ばほどの印象なのだが。

「コールドマンさまは?」

 マリが「やめて」と笑った。

< 114 / 186 >

この作品をシェア

pagetop