溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 気がついたら椿の目の前に豪華なホテルがそびえたっていた。

「こっちよ。あ、でも、ディナーにはまだ早いから、ラウンジでお茶にしましょう」

「あの、でしたら、お茶だけでお願いします」

「ええ?」

「夜は用事があって、その、七時くらいには帰りたいんです」

「あら。そうなの。だったら言ってくれたらよかったのに。でもそれなら仕方ないわねぇ。じゃあ、お茶だけにしましょう」

 またマリが歩き出し、後ろからついていく。椿はほっと胸をなでおろした。

(よかった)

 このままディナーと言われてレストランに入られたら数時間は仕方がないが、お茶ならうまくやれば一時間ばかりで席を立てそうだ。時計を見ると五時半少し前なので、六時半頃に帰宅を告げればいいだろう。

 一階にある広いラウンジに入り、スタッフに導かれて席に着いた。

「私はケーキセットでコーヒー。ブラックでお願い。ツバキは?」

「ミルクティーをお願いします」

「ツバキ、ケーキはいいの?」

「はい。飲みものだけでけっこうです」

「ホントに? 遠慮しなくていいわよ」

「三時頃に甘いものを食べたのでお腹がすいていないので」

「あら、そうなの」

「では、ケーキセットでコーヒー、ミルクティーは単品でございますね。すぐにケーキをお持ちいたします」

 一度下がったスタッフは、またすぐ戻ってきてマリに色とりどりのケーキが載ったトレーを示した。

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