溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
(おいしそう・・)

 そんなことを思って見守っていると、マリがもう一度尋ねてきた。

「本当のいいの? 頼まない? どれもおいしそうだわ」

「いえ、大丈夫です」

 残念な思いを奥に仕舞いこみ、辞退する。家に帰れば冷蔵庫にはアップルパイあるので温めて食べたらいい。きっとここでマリと一緒にケーキを食べるよりおいしいはずだ。

 スタッフがケーキをケーキ皿に取り分けている間に、別のスタッフがミルクティーとコーヒーを運んできた。

「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」

 二人が丁寧に頭を下げて下がっていく。マリはさっそくコーヒーを一口含み、「おいしい」と感想を述べた。

「用事があるのなら長話ができないので大事なことだけお話するわね。タクミってストイックだから納得するまで追求する性格なの。しかも、これって決めたら人の言うことは聞かなくて頑固で、流通王のグランパにさえ遠慮することなく質問攻めにするくらいなのよ。グランパもかなりの頑固者だから、最初、怒らせるんじゃないかってハラハラしたわ。でも似た者同士って意気投合しちゃうものなのね。今ではグランパのお気に入りの一人よ。タクミが一人っ子じゃなかったら、ウチの会社で働いてもらうつもりだったと思うわ」

「・・・・・・・・・」

「タクミのホームステイ先がジャックの家で、あ、ジャックって叔父なんだけど、その叔父夫婦とタクミの両親が友達でね。それでホームステイ先になったってわけ。タクミってマーケティング専門でしょ、グランパがどうやって会社を大きくしたのか、とても興味深かったみたい」

 だんだん人間関係がわかってくる。わかればわかるほど、椿の背は寒くなってきた。上流階級同士のおつきあいに息が止まりそうだ。

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