溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「タクミが留学していた期間は二年だけど、毎年夏はバカンスにやってくるのよ。それがすごく楽しみだった。一年に一度の逢瀬なんだもん」

 その時、椿の指がピクンと動いた。

「逢瀬なんて言葉、よくご存じですね。それにイントネーションも日本人とほとんどかわらないし。マリさんはどこで日本語を?」

「私、ハーフなのよ」

「・・ハーフ」

「えぇ。母が日本人なの」

 なるほど。だから日本語がやたらうまく、容姿もエキゾチックなムードがあるのだ。椿はすっかり納得した。

「タクミの英語は留学してきた時からすでに上手だったけど、磨きをかけたのは母なのよ」

「・・そうなんですか」

「ねぇ、ツバキ、明日、タクミに私が来たことを伝える際はちゃんと対応するようにって釘を刺しておいてね」

「はぁ、まぁ・・っはい」

 はい、と返事をしてもらえたことがうれしかったのか、マリは明るく笑った。その笑顔は悔しいほど麗しく、似合っている。まるでグラビアを見ているように思えて仕方がない。

「ツバキのご両親はどんな仕事をしているの?」

「両親はいないんです」

「え?」

「もともとシングルマザーだったんですけど、八つの時に病気でなくなってしまって」

「祖父母に育てられたってこと?」

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