溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 ふるふるとかぶりを振る。

「祖父母はわたしが生まれる前に交通事故で亡くなりました。叔母と三人に暮らしていて、母が亡くなってからはその叔母と二人です」

「まぁ! ごめんなさい。つまらないことを聞いてしまったわ」

「知らないんだから仕方ありませんよ」

「本当にごめんなさいね。じゃあ、大変だったんじゃない?」

「そうでもないです。祖父母の事故は保険が下りましたし、それに、援助してくださった方もいて、とても恵まれていると思っています」

「援助! それはすばらしいわね。そういう善意の気持ちの強い人と巡り合えるっていうのは、ツバキに人を惹きつける力があるということよ」

 そうなのかな? と首をかしげるが、マリは一人で、うんうん、うなずいて納得している。

「神はちゃんと見ておられるわ。相応しい道に導いてくださるのよ」

 そんな大層な、と一瞬思ったものの、マリはアメリカ人なのでおそらくキリスト教徒だろう。ならばそういう言葉が自然と出るのは当然かもしれない。

「ならいいですけど・・」

「そうよ。きっとツバキはいい子だったのよ。なんとかしてあげたい! って強く思ったからじゃないとなかなかできないわ。グランパも基金を設けているんだけど、そういう組織や施設に寄付することは多くても、個人を援助しようって、あんまりないんじゃない? ツバキには〝あしながおじさん〟がいるのね」

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