溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 翌日からいつマリが来るのかが気になって落ち着かない日が始まった。

 だが、結局この週にマリが来ることはなかった。帰ろうと思って社長室の扉に近づくと、やや大きな声で真壁がなにか言ってるのが聞こえた。いけないと思いつつも、つい興味が湧いて耳をそばだててしまった。

「だから何度も言っているじゃないか。連日帰宅は十時を過ぎる。今日だってそうだ。そんな時間からお前の相手をするのはごめんだ」

 お前、という言葉に椿が両目を見開いた。

(誰? 家族? 兄弟とか?)

「聞き分けのないことを言うな。え? 明日? 明日は出かける。あぁ、朝から用があるから。・・わかったよ、時間を取るから騒がないでくれ。メールするよ。あぁ。もうしばらく待っていてくれ」

 終わったようだ。静かになった。椿は扉をノックした。「はい」と声がしたので扉を開き、中に入らず真壁に声をかけた。

「失礼します。社長、終業時間ですので、これで失礼させていただきます」

「うん、お疲れ様。気をつけて」

「はい」

 挨拶と礼。このわずかな間、真壁の様子をうかがったものの特に変化はなく、いつもの彼がそこに座っているだけだ。だからこそ電話の相手が誰だか気になる。かなり親しい、というかもう身内だと思うレベルだ。

(匠さんも一人っ子だったよね? あれ? 違ったっけ?)

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