溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 土曜日の首都高はすいていてあっという間に目的地に到着した。時間貸し駐車場に車を止めると、真壁は「江戸切子」という看板が掲げられている店に入っていった。

(江戸切子? なんだろう。食器でも買うのかな?)

 そんなことを考えている椿とは対照的に、真壁は飾られている商品には目もくれず、店員に声をかけて名を名乗っている。するとスタッフが奥から箱を持って現れた。そしてテーブルに置き、中のものを取り出す。置かれたものに椿は目を見張った。

「すごい・・」

 クリスタルのピンヒールだった。伝統的な江戸切子の細かな文様が施されている。そしてなにより驚いたのは大きさだ。

「これ・・履けそう」

 思わずつぶやいた言葉にスタッフが笑いながら「履けますよ」と答えた。

「真壁さまからサイズを伺っています。実物サイズでお作りいたしました。ぜひ、履いてみてください」

「でも・・」

 椿の驚きと戸惑いにスタッフの笑みが深まる。

「立ち上がったらさすがにヒールは割れますので、座ったままでお願いします」

 なるほど。と、一瞬思ったものの、こんな繊細な置物に足を入れていいのかどうか困惑させられる。万が一、割れても困るし、真壁のプレゼントだ、まかり間違っても壊したくない。

「大丈夫です。そんなにやわではありませんから。さぁ、こちらにお掛けになって、試してみてください」

 椅子を勧められ、椿は促されるままに腰かけた。スタッフが屈んで足の前に江戸切子のピンヒールを置く。

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