溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「マリ」

「タクミは黙ってて!」

 マリは叫ぶように遮ると、大きく深呼吸をした。それからまた間を置かずに続ける。

「タクミとはじめて会ったのは十五の時で、その時は単なる日本人のお兄さんと思ってた。当時、ボーイフレンドもいたし、タクミは年に一度夏にグランパに会いにくるだけだから、そういう意味では眼中になかったわ。でも、社会人になって働き始めて、シンウォール・ホールディングスのこと、タクミが社長をやってるラクビズのこと、いろいろ調べたらグランパが気に入っている意味がわかったの。そこから始まったのよ」

 フンと鼻息荒く言い募り、マリはそこから「はぁ!」と大きな声を出して息を吐き出した。

「両親もタクミがパートナーなら安心だって言うし、タクミ自身も紳士だし、どう考えても両家にとっても会社にとってもプラスだから、私たちの結婚は最善だと思っていたわ。それなのに、ずっと好きな人がいるって、今ごろ言われたって納得できないわよっ。すごく腹が立つ」

 それはわたしが責められることではないのでは? と椿は思ったが、とても口に出して言えやしない。恐縮して俯いているのが精いっぱいだ。

「だけどね、ツバキ」

「・・・・・・・」

「聞いてる!?」

「はいっ、聞いていますっ」

 今度は慌てて顔を上げる。睨みつけてくる強い視線に息が止まりそうな気がした。

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