溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「一番腹が立つのは、タクミがずっと想い続けていたっていうのに、あなた、まったくタクミのこと覚えていないんですって!? ひどすぎない? それが猛烈にムカつくのよっ」

「――――――」

 怒鳴られて思わず目を強く瞑り、肩をすくめる。こんなふうに人に怒鳴られたことがないのでこわくて息を止めて固まる。

「ホントに覚えていないの?」

「・・はい」

 そう答えた横で真壁の吐息が聞こえた。失望させたようだ。それがマリの言葉以上に椿を傷つけた。

 消え入りそうな声にマリが苛立ったように続ける。

「信じられないっ。タクミは日本人にしては背が高いし、顔もいいし、優秀だし、一度会ったら忘れないんじゃない? アメリカ人の私だって一度会ったら忘れないわよ」

「・・・・・・すみません」

「ソレ、私じゃなく、タクミに言う言葉じゃないの!?」

「・・はい」

「まったく。こんな頼りない人に私が負けるなんて、自分が許せないわ」

 マリの言葉の正しさに項垂れるしかできない。辛くて泣きそうだ。だが、ここで泣いては本当に情けなくて単なる負け犬のような気がして、それだけは避けたいと我慢する。だから声を出すことができなかった。

「マリ、もうやめろ」

「だからタクミは」

「いい加減にしろ!」

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