溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 掃除と洗濯は必須だが、食事は買えば済むので落ち着いてからでいいと思い、当座口にするミネラルウォーターやジュースだけ買って冷やしているくらいだ。

 椿は食べながら狭い部屋を見渡した。

「わたしの城。しっかり守らなきゃ」

 ワンルームマンションの狭い部屋。ここがこれから椿の城になる。今までは郊外の4LDKマンションで暮らしていて、二人では広かった。もともとは祖父母が買ったマンションで、親子四人で暮らしていたのだから当然だ。

 椿の母はシングルマザーだが、その母が妊娠し、五人で暮らすことになると思った矢先、祖父母は居眠り運転のトラックにはねられて亡くなってしまった。その後、椿が生まれて女三人の生活が始まった。

 だが、不幸は続いた。椿が六歳になった矢先、母が癌であることが発覚。二年間の闘病生活の末、亡くなってしまった。だから椿は叔母に育ててもらったのだ。

 叔母は今でも独身だが、椿はそれが自分のせいだと思ってずっと悩んできた。姪とはいえ実の子でもないのに、椿の養育のために遊ぶことを控えていたから婚期を逃したと思っていた。それが先月、交際相手がいることがわかったので就職を機に独立を決めたのだ。

(楓さんには幸せになってほしい。これからは自分の幸せを追求してほしい。わたしも社会人になったんだから、自分のことは自分でする。それが楓さんへの恩返しなるもの)

 しっかり働き、しっかり生きる。叔母がきちんと育ててくれたことを証明するのだ。

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