溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
『そう。ならいいわ。許してあげる、あなたたちの関係』

「マリさん」

 偉そうに、とは思わなかった。きっとマリにとっては最大の虚勢であり称賛なのだろう。

 多少は厳しい物言いをされたが、これくらいで身を引くと言ってくれるのだから感謝しないといけない――椿はそう思った。

『勘違いしないでね、ツバキに負けたなんて思ってないから』

「私がマリさんに勝てる要素なんてないです」

『バカ。そういうもんじゃないわよ。あ、ツバキ、もう一つ約束しなさい』

「は・・え? もう一つ?」

『そうよ』

 電話口のマリがくすっと小さく笑ったが、述べられた口調は鋭かった。

『絶対にタクミを他の女に奪われないって!』

「・・・・・・」

『いいこと? 私が許したのはツバキとタクミの出会いと関係だけなんだから、あなたがミスしてタクミを他の女に奪われたら、それこそ本当に許さないんだからっ。だってそうじゃない。今まで大変だったのが、これからタクミと幸せになるってとこにいるってのに、その大事な切符を失うって愚か極まりないわっ。私が身を引く意味が――なによ』

 椿の大きな瞳から大粒の涙がぼろぼろと溢れ、ぐすっとしゃくり上げた音が聞こえたのだろう。マリは驚いたように言葉を切った。

『ツバキ?』

 うっ、うっ、という嗚咽が聞こえて怖じ気が出たのか、椿の名を口にするマリの口調も弱々しいものだ。肩を震わせ、声を殺して泣く椿の様子を窺っているようだ。

< 153 / 186 >

この作品をシェア

pagetop