溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
(自分がまったく不幸だって思ったことがないなんてないけど、楓さんもいるし、学校でもいじめられるわけでもなかったから、充分満たされて幸せなんだって思ってそう考えてた。でも・・寂しかったことは確か。やっぱりお祖父ちゃんやお祖母ちゃん、両親と揃ってお出かけとかしたかったから)

 これからは自分がそれを実現できるように頑張ればいい。真壁との間に子どもが生まれたら、真壁の両親と自分たちと子どもで楽しく過ごせばいいのだ。叔母にもきっと子どもが授かって、幸せな家庭を得られることだろう。

(大丈夫。今まで頑張ってきたんだから。信じてる)

 カタンと音がして振り返ったら、濡れた髪をタオルで拭きつつ歩み寄ってくる真壁が見えた。

「椿、あがった。入って」

「はい」

「また見ていたのか」

「いくら見て見飽きないもん」

 真壁が慈しみ深いまなざしを向けて「そうか」と答えた。

「入ってくる」

「椿」

 横を通り越そうとした椿の腕を真壁が掴み、引き寄せたかと思うと唇が重なった。

「・・ん」

 強く、弱く、触れたり、吸ったり。

 ほんの少しの間、唇への愛撫を行い、真壁は手を離した。

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 妙に照れくさくて俯き加減に答え、椿は唇を軽く指で押さえつつリビングを出た。

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