溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
(わたし・・責任重大。匠さんの好意に応えていけるかな・・うわ、ホント、不安。頑張らなきゃ!)

 ただ享受するだけなどイヤだ。得た分は、いや、それ以上を返したい。そうは思うが、自分にできることはなんだろう? そう考え、眉間に眉を寄せた。

(ないわ・・)

 ガーンとにわかにショック。なんの取り柄もない凡たる自分。

 美人なわけでもグラマラスなわけでもない。男性とつきあったことがないので経験などまったく持ち合わせていない。

 キスすらも真壁に告白された時に交わしたのものがはじめてだ。性的に男性を悦ばせる方法など知らないし、できない。

(思いつくことっていったら、お料理とか、家をきれいに保つとか、それくらい。なんだかなぁ~)

 はぁ~と一際長くて大きなため息をついた。

「抜きんでてなくていいから、もうちょっとなにか、こう・・匠さんにアピールできるものあってもいいものなのに」

――タクミ本人が私じゃなくて、ツバキがいいって言ってるのに、そんな理由でタクミの望んでいる幸福を否定するなんてバカじゃない。そう思わない?

 マリの言葉が急に弾けた。

「あ――」

――次の課題が見つかった。うん。椿の、その丁寧語。僕たちはつきあっているんだから、そういう話し方は相応しくないだろう。でも言われてすぐに変わるものでもないし、ゆっくりでいいから距離を縮めてほしいんだけど。

 真壁はこれまで椿を見守り、今の椿を好きだと言ってくれているのだ。彼の希望は二人の距離がもっと近くなるように言葉遣いを変えること。それだけだ。

(大事なこと抜けちゃって・・情けないなぁもう・・だから今まで匠さんのこと思い出せずにいたってのに。もっとしっかりしなきゃ!)
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