溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 風呂からあがってスキンケアを行う。今までは女としてやらなきゃって感じだったが今違う。真壁にきれいだと言われたい、真壁の横に立つ者としてきれいになりたい、そう願って念入りに行っている。

 次に濡れ髪をタオルドライして、洗い流さないエマルジョン系のアウトバス・トリートメントを根元に揉み込み、最後にドライヤーで乾かす。ツルピカの艶髪を軽く手櫛で梳くと出来栄えを確認して廊下に出た。

 リビングでは真壁がチェストに向かった立っている。そっと歩み寄ってなにをしているのか覗き込んでみると、真壁はただじっと二つのガラスケースに入っている麗しい靴を見つめているだけだった。

「私にはまた見ているのかって聞いたくせに。匠さんだって眺めているじゃない」

「あ、椿、あがったんだ」

 突然の椿からの声かけに、真壁は驚いた様子でこちらを見てから微笑む。

「そうなんだ。なんだか感無量でね」

「感無量?」

「この日が本当に来たんだなって思ってさ」

「この日って? 私が思い出した日のこと?」

「それもあるけど、二つの靴が一つになる日のことだ。十四年前、どちらか選べなかった僕が、二つとも渡さずに片方だけ自分で持っていて、母さんにも言わずにずっと秘めていたこと。自分でもなぜそんなことをしたのか、ぜんぜんわからなかった。あの時、椿は八つの可愛い女の子で、僕からしたら、妹ができたらこんな感じだったのかなって思う程度だったし。それが・・」

「匠さん?」

 真壁の手がそっと椿の頬にあてがわれる。

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