溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 言うと思った、と言いかけてやめた。これも心配と愛情ゆえのことで、けっしてからかっているわけでも冗談を言っているわけでもない。

「三十二歳、独身。だけど」

 と、そこまで言ってから、一瞬どう続けようか迷った。女性に興味がないのか、日本人女性に興味がないのか、決まった人がいるのか、しかしながら不要なことを言う必要もない。答えはすぐに決まった。

「決まった人がいるみたい」

 無用のツッコミを避けるにはこれが一番手っ取り早いから選んだものだが、言ってから少し後悔した。

『そうなの。それは残念ね。まぁ、いい男ほど結婚しているかゲイかってよく言われることだから。椿ちゃんは若いんだからゆっくり探せばいいわね』

 ドキンと心臓が跳ねた。それを押さえて返事をする。

「早く結婚してほしいって言ったかと思えばゆっくり探せばいいってどっちよ」

『どっちもよ。でも、よかったわ。いつも通りの声が聞けてほっとした。メールでもなんでもいいから、ちょくちょく連絡入れてね』

「うん、わかった。ありがとう」

『じゃあね』

「うん、じゃあね」

 電話が切れて、なんだか全身から力が抜けていく。

 心配してくれているとわかっていながら昨日連絡しなかったことを反省しつつも、叔母の言葉に少々動揺した。

(いい男ほど結婚しているかゲイかってよく言われることだから……か。なるほど、それは納得。でも楓さん、今のわたしに恋愛している余裕なんてないから)

 ふっと自虐的な笑みを浮かべると、椿は立ち上がった。

(さっさとお風呂に入って寝よう。それが一番)

   ***
< 24 / 186 >

この作品をシェア

pagetop