溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 間もなく扉が開いて社長室から肩を落としてしょぼんとしている若い男が現れた。椿と山瀬にバツの悪そうな顔をして軽く会釈をすると、部屋を出ていった。

 言葉を失っている椿に山瀬が苦笑を浮かべる。

「真壁社長、かなりストイックだからね」

「・・優しい方だと思っていたのに驚きました」

 声を低くしてそう答えると、山瀬の苦笑が深まった。

「そんなことないわよ。あんまり優しくないと思うわ。アレ、けっこう普通だから」

「普通?」

「えぇ。よく部下を怒鳴りつけているわよ。ぜんぜん珍しくないし。最近の若い子、すぐにネットに頼っちゃうからね。データは公開されているネット上のものでは使い物にならないの。信頼性が乏しい、影響力が未知数、そして――」

「古い」

 最後の言葉は真壁自身からのものだった。驚いて振り返ると社長室に続く戸口に真壁が立っている。

「社長、お疲れ様です」

「ん」

 かなり不機嫌そうだ。椿の口角が困惑にヒクリと引きつった。

「久々にひどい資料を見せられて頭に血が上った。悪いけど、濃いめのコーヒー入れてもらえる? 頭を切り替えたい」

 椿が慌てて「かしこまりました」と立ち上がった。それを見て真壁は社長室に戻ってしまった。

「さっきの古いっていうのは、データのことですよね?」

「そうね。表に出ているデータを使って商売したって勝てっこないわ。新しい切り口によって導き出された情報と今までの情報を突き合わせていって、そこに勝機があるかどうか分析するのがこの会社の役目だからね」

「なるほど」
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