溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「元気な赤ちゃん産んでくださいね!」

「頑張れ山瀬ちゃん!」

「画像送ってなー」

「ありがとうございます。頑張ります!」

 スタッフたちに送られながら山瀬は勤務を終え、産休に入った。いくつもの花束を抱えて退社する山瀬の背を見送る椿は複雑な心境だった。

(いよいよ明日から一人!)

 そう思うと不安が募ってくる。わからないことがあっても聞く人がいない。いや、いるにはいるが、それをやってしまっては秘書失格だ。

「雪代さん、ちょっといい?」

 見送りを終えて真壁と一緒に社長室まで戻ってきて、隣の秘書室に入ろうとして声をかけられた。はい、と返事をし、真壁に追随する。

「今日って都合悪い?」

「今日? 今からですか?」

「あぁ」

「残業ってことでしょうか? だったらぜんぜん大丈夫です」

 すると真壁はさも可笑しそうに笑い始めた。

「あの?」

「雪代さん、真面目だね。面接の時もそう思ったけど、本当に真面目さがにじみ出てる。悪いヤツに騙されそうで心配になるよ」

 笑っているのに心配になると言われてもぜんぜん説得力がないのだが。そう思いつつ、椿はじっと真壁を見つめていた。

「仕事じゃなくて・・あ、でも、君にとっては仕事になるのかな。明日から二人きりになるから歓迎会でも、と思ったんだけど」

「!」

 ツッコミどころ満載。二人きりになるからとはこれ如何に。
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