溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 椿の顔が途端に熱く紅潮した。

「二人で食事をするのに歓迎会もなにもないか。本当は山瀬さんも誘いたかったんだけど、身重な人に遅くまでつきあわせるのは忍びなくてね。かといって誘わないと感じ悪いし、誘われたら断りにくいだろうし」

「それは確かにそうですね」

「あ、雪代さんは酒はどうなの?」

「少しだけなら」

「じゃあ、軽く行こう。ご家族が心配しないように遅くならない程度にするから」

「その心配はありません。一人暮らしなんで」

「えぇっ!?」

「え?」

 真壁の声が意外に大きく、さらに目を大きく見開いて驚いているので、椿までつられるように声を出してしまった。

「あの?」

「・・え、あ、いや、なんでもない。てっきりご家族と同居だと思っていたから」

「就職がいい機会なので家を出たんです。あ、それもちょっと正確じゃないかな・・来年、一緒に暮らしていた叔母が結婚する予定なので、家を処分するために先に出たんです」

「家を処分?」

「どこから説明したらいいのかな・・えっーと、わたし、八つで母を亡くしまして、そこから叔母と二人暮らしだったんです。でも、住んでいた家で一人で暮らすのは広すぎるので、叔母が結婚したら処分しようってことになったんです」

「それは、叔母さん、おめでたいね」

「ありがとうございます。わたしのために婚期を逃したと思っていたからほっとしました。あ、だから時間は気にしなくていいですが、明日寝過ごしたら大変なので遅くならないのはありがたいです」

 冗談を込めて答えると、真壁の精悍な顔にうっすら笑みが戻った。それを見てほっとする。
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