溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「どうかした?」

 真壁が少し身を屈めて問いかけてきた。頭のすぐ横で囁くように話しかけられたら、背中がゾクリとざわめいた。

(社長、声も素敵。少し低くて、でも滑らかで柔らかな声)

 ナレーターにでもなれそうな感じがする。ラジオから流れてきたら、それだけでとろんとなってしまいそうだ。

「なんでもないですけど・・どうしてですか?」

「いや、なんか黙り込んで静かだから。もしかして、誘ったの、迷惑だったかなって思って」

「えぇ! そんな、とんでもないですっ。うれしいです、社長と二人で食事なんて」

 と、ここまで言って、ひゃっと飛び上がった。

「あのっ、ヘンな意味じゃないですっ、その」

「ヘンな意味って?」

「!」

「デートってこと?」

「ちがっ」

「違うんだ。残念だなぁ」

「ええっ!」

 すると突然、真壁は声を上げて笑い出した。周囲の者が驚いてこちらを振り返るほどだ。

「社長・・?」

「あはははは、ごめん。雪代さんの取り乱し方があんまりにも手本通りだったもんだから。いや、本当にごめん。からかうつもりはないよ。でも、残念な気持ちは本当だよ。だって違うってことは雪代さんにとって僕は対象外ってことだろ? 年頃の男として対象外扱いは悲しいよ」

「年頃って・・」

「いい表現だろ?」

「・・・・・・・」
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