溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「冷めないうちに食べて」

「はいっ。いただきますっ」

 どれから食べようかと迷いつつ、花の形のシュウマイを取り上げた。少しのからしと醤油をつけて口に入れると、じゅわっと肉汁がにじみ出てきた。

「んん~~おいしいっ」

 肉の旨味と玉ねぎの甘みがなんとも言えない。蒸籠にある四つのシュウマイをあっという間に食べてしまった。

「ところで、いつから一人暮らしを?」

「入社する三日くらい前からなので、二週間過ぎたところです」

「ウチの初任給はけっして悪くはないと思うけど、特別高いわけじゃない。一人暮らしでは大変じゃない?」

「そんなことはないです。家賃安いんで」

「安いと言っても・・」

「下町だからでしょうか。共益費入れて四万円切るんです。ぜんぜん大丈夫です」

 と、いきなり真壁がげほっとむせ込んだので驚いた。

「社長、大丈夫ですかっ?」

「ごめん、大丈夫だ」

 言いつつビールを口に含み、咳を押さえ込む。それから落ち着いた真壁は椿の顔を見て驚いたように尋ねてきた。

「そんな物件、おかしくないか? もしかして事故物件じゃないのか?」

「そこは確認しました。それはないって言われました。たぶん、古いから安いんじゃないかと」

「古い? どれくらい?」

「築四十二年って聞いています」

「・・・・・・・」

「でも内装もちゃんと整えられているし、部屋の中はきれいですよ。しかも、エントランスはオートロックになっているから防犯もちゃんとしてますし」

「場所はどこ?」

「板橋です」

「・・そう」
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