溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 その時、新しい蒸籠が運ばれてきた。

「お熱いので火傷しないように気をつけてください」

 スタッフがにこやかに話しながら蒸籠と醤油ベースのつけだれ、それからレンゲをテーブルに置く。それだけで蒸籠の中にものがわかった。

「これもおいしそう! 小籠包大好きなんです」

 唯一のリクエストの小籠包だ。上のほうを箸で摘み上げてレンゲに乗せる。そこにつけだれを少し垂らして火傷しないように気をつけながら少し齧って中のスープを飲んだ。

「んー、おいしいっ。肉汁たっぷり。やっぱり高級店のは違いますね。いつもは冷凍食品だから。幸せっ」

 中の肉がプリプリしているし、スープは香ばしくてすばらしくおいしい。

「喜んでもらえてよかったよ。連れてきた甲斐があった。それで家の話に戻るけど、周辺の治安は大丈夫なの?」

「はい。両隣も女性が住んでいます。右側の部屋はシングルマザーで、この前の週末、三時間ほどお子さん預かったら、泣いて喜ばれました」

「雪代さんが子守りを?」

「はい。少しでも協力し合えたらいいかなって。母もシングルマザーでしたが、ウチは叔母との三人暮らしだったから困らなかったみたいです。でも母一人子一人なら大変ですよね。そういうわけで、安全面は大丈夫です」

「・・そう」

 ニコニコしながら答えて小籠包を頬張る。最後の三つ目はほんの少し冷めたので、丸ごと頬張ってしまった。

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