溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
「どうしたの? なにかあった? そんなに驚いて」

「・・・・・・・」

「雪代さん?」

「いいえ、すみません。あの、社長自らとは思わなかったもので・・」

「そう? 必ずこの会場に来るんだから、僕が案内したほうが効率いいでしょ。その間、人事の者は別の仕事ができるんだからね」

 確かにそう言われたらそうかもしれない。椿は「そうですね」と控えめな口調で返事をした。

「行こう」

 そっと肩甲骨の間くらいに手を置かれ、促される。

 触れられたところから火でも噴き出してきそうな錯覚が起き、椿は全身が緊張で熱くなるのを感じた。

(大スターにでも触られたみたいな反応! 自分が恥ずかしいっ)

 とはいえただでさえ今日から新入社員として会社に入り、さらに会社のトップと一緒なのだ。緊張で心臓はバクバクしている。慣れないパンプスで転びそうだ。三センチヒールなのでけっして高くはないが、今の椿には不安定で心もとない。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。もう雪代さんは立派な我が社の社員なんだから」

「はっ、はい」

「誰も取って食ったりしないよ。でも、雪代さん、可愛いから、男性スタッフには気をつけたほうがいいかもね」

「――――え? そんな・・冗談は」

「冗談じゃないよ。会社の社員は仲間ではあるが、同時にライバルでもあるし、人間であるし、男でもあり女でもある。気をつけないとね。それは僕も含まれるから」

 椿の顔が真っ赤に染まっている。今まで男性にそんなことを言われたことがないので、どう反応していいのかわからない。そんな緊張でガチガチになっている様子を見下ろしつつ、真壁はふんわり微笑んだ。

「本当だから、嘘じゃないよ」

 屈んで囁いたのだろうか。小声なのにやけにはっきりと聞こえた。

 驚いて顔を向けると真壁は姿勢よく立ち、悠然と歩いている。

(? 気のせい?)

 椿はその横を遅れないようについていった。

   * * *

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