コガレル(番外編)~弥生ホリック~
繋がらないなら、スマホの意味なくね?
手にしたスマホに視線を戻すと、怒りを指先にぶつけた。
返信しろ、ってトークをもう何度も送ってる。
もしかしたらと和乃さんに電話した。
…駄目だ、弥生から連絡はないそうだ。
淡い期待を抱いて准にも電話した。
「今、俺長野だし」
「なんで?」
「スノボ。あ、親父もいないよ。シンガポールに行ってる」
家も空っぽか。
「はぁ…」
通話を切るとため息が出た。
時刻は22時の少し前。
怒って熊本に帰ってしまったのか。
熊本行きの飛行機の最終便はどの曜日でも19時。
チケットを買った時、早過ぎると思ったから覚えてる。
それでも、会える時間は短くても、今夜から出発の時まで一緒に過ごす予定だった。
澤口のことを勘違いしてるかも知れない。
後ろめたいことはないし、他に頼める人物もいないと鍵を彼女に託したのは、やっぱり間違いだった。
弥生の奴、言い訳も聞いてくれないとか…
“ごめん”
既読にならないトークをまた一つ増やした。