コガレル(番外編)~弥生ホリック~


 車を地下の駐車場に入れた。
 冬にここに連れてきた時、弥生はちょっとムクれてた。
 もう少し親父と飲んで話したかったとか、あっちの家に泊まりたかったとか。
 マンションに泊まるのは、諸々あからさまで恥ずかしいそうだ。
 グチグチ言う唇を、ここで、車の中でふさいでやった。

 弥生は親父にともかく懐いてる。
 父親を知らずに育ったから、うちの親父にそれを重ねてるんだろう。
 親父にしても、息子しか知らないもんだから娘のように甘えてくる弥生が可愛くてたまらないらしい。
 目尻は下がりっぱなしだ。

 微笑ましい反面、面白くない。
 俺を騙した前科犯達だ。
 余計に弥生を独占したくなる。
 ガキだな、全く…

 ん? 待て、そうか…
 さっき助手席に放った、スマホを取り上げる。
 弥生のことだから、もしかしたら親父に連絡してるかも知れない。
 親父の番号をタップした。

「あぁ、圭だけど。もしかして弥生から…」

 予想は当たった。
 やっぱり親父に電話してた。
 俺のことは無視してるくせに、だ。
 後でお仕置き決定だな。
 もちろんあっちの家に居たらの話だ。

 親父が言うには、渡した鍵を持ってるなら勝手に上がっていいと話したらしい。

 頼むから居てくれ…
 一度は駐車した車を、すぐに走らせた。

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