コガレル(番外編)~弥生ホリック~

 胸に弥生の頭をかき抱けば、唸り声がした。

「苦…しい…圭さん、」

 目が覚めたか。
 俺もずっと胸が苦しかったよ。

「熊本に…帰ったのかと思った…」

 腕を少し緩めて解放してやると、顔を覗き込んだ。
 息苦しさから上気して、頬を朱くさせてる。

 やっぱり弥生がいい。
 どうして、この人じゃなきゃ駄目なんだろう、俺は…

「圭さんに会わないで帰るつもりでした」
「なんで?」

 澤口に何を言われた?

「ドラマの食事会を断ったって」

 あぁ、そんなことか。
 確かに今日は断った。

「『大切な人との先約があるから、今日だけは勘弁して下さい』って、一人一人に謝ったよ」

 弥生は自分から俺の胸に顔を埋めてきた。

「俺が仕切り直して後日、会を開くとも言ったし、大丈夫だよ。みんな許してくれた、心配ない」

 弥生の頭を撫でた。
 誕生日なのに、こんな寒い部屋で一人で過ごして…
 せめて准か親父でもいたら寂しくなかっただろうに。

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