コガレル(番外編)~弥生ホリック~

「澤口……って、弥生が会ったマネージャーだけど、」
「ネットで読みました。
会員制のレストランで二人で食事したり、別の日には牛丼屋のカウンターで並んでたって」

「はっ、」

 可笑しかった。
 何気に詳しい。
 もしかして知らないなら、わざわざ事を荒立てる必要もないかと思ってたのに。

「会員制のレストランは、涌井の結婚披露パーティー。あいつ、できちゃった結婚したんだよ」

 本人は『ショットガン・マリッジ』と言って譲らないけど。
「同じだろ!」って、突っ込まれるところまでがここ最近、仲間内での一連の流れになってる。

 涌井は事務所のモデルを孕ませた。
 一月に、腹を括って結婚したって訳だ。

「次の仕事があったから、途中で二人で会場を後にしたところを撮られた」

 涌井は新婚だし、赤ん坊も生まれるって理由で、不規則で忙しい俺のマネージャーを外れた。
 それで新しく俺の担当になったのが澤口だ。

「牛丼は弁解の余地はない。仕事の合間に腹が空いたから食べに行った」

 弥生は相変わらず、俺の胸に顔を埋めてる。

「怒った?」

 柔らかい髪の毛に俺の鼻を埋めて聞けば、首を横に振られた。
 顎に手を当てて上を向かせようとしたのに、それに従わない。
 額を余計に押し付けてきた。

「見ないで下さい。私、酷い顔してます」

 何それ、ますます見たい。

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