コガレル(番外編)~弥生ホリック~
「圭さんが私を好きでいる理由が分かりません」
「一人で生まれるはずが、二人になっちゃったからでしょ?」
いつか熊本で話したことだ。
弥生の手が俺の背中のシャツを握った。
その強さに、今は冗談を言うべき時じゃないと悟った。
「それは…私が勝手に思ったことです。
圭さんの周りには魅力的な人が沢山います。
中には好きと思える人も現れるかも知れません」
確かに今までだって、今だって、美人も可愛い人も俺の周りには割といる。
スタッフさんにしたって、ひたむきに仕事してれば、それだけで魅力的に見える。
でもテレビに出る女性が綺麗なのは当たり前だろ?
それなりに金をかけて、カメラに映る直前までプロにお直ししてもらってるんだから。
弥生だって与えられた場所で真摯に働いてる。
弥生は素で綺麗。
俺が不安を感じるくらい…
それに、俺は弥生の演技じゃない表情が好きだよ。
美味いものを食えばとろけそうな顔をするし、家に帰れば犬みたいに喜んで出迎えてくれる。
それから弥生の作った温かい食事を食べて、少しでも褒めようものなら、目の前でこれまたとろけそうに笑うし。
これに落ちない男はいないだろう。
一日の疲れは吹っ飛ぶ。
また朝になればこの可愛い人と挨拶を交わして一日が始まる。
親父や准も骨抜きにされたのは間違いない。
もう一度弥生をきつく抱きしめた。
この人は柔らかくて気持ちいい。
髪もほっぺも唇も、体中どこもかしこも触れる場所が柔らかい。
これは俺だけが知ってて、俺だけが触れていい。
他の奴には指一本触れさせない。