コガレル(番外編)~弥生ホリック~
「暖炉なんて見て楽しい?」
弥生の首筋に鼻を埋めて聞いた。
「このお屋敷にいた時、暖炉に火が灯るのを想像してたんです」
そういえば年末、ここからマンションへ連れ出すのに暖炉が何たらともグズってたっけ。
弥生がここで暮らしたのは夏だ。
たった一夏だったのに、ギュッと濃縮された夏だった。
「プレゼント、マンションにある。間に合わなかった」
「航空券だけで充分です」
弥生が振り向いたから、キスした。
そう言うと思った。
マンションに行こうと誘ったら、今日は素直に頷いた。
暖炉の火が消えたのを確認して、身支度を終えた弥生を見て焦った。
「それ、誰にもらった?」
弥生の片手には小さいボストンバッグと有名ジュエリー店の手提げ袋が。
「これは違います、冬馬君が、」
「カメラマンに会ったの?」
カメラマンが上京してることは、弥生から聞いてた。
「…会いましたけど、」
「なんで、そんな物受け取るんだよ!」
誕生日のプレゼントだろう、しかもアクセサリー?
俺が嘆いてる間に会ってた?
スマホの電源切って?
こんな物をやるカメラマンも、受け取った弥生にも腹が立った。
弥生の荷物のない方の手首を掴むと、引いた。