コガレル(番外編)~弥生ホリック~

 約束はきっちり守られた。

「変態っぽい」と時々引かれながら夜明けまで二人で風呂に入って、昼過ぎまでベッドの上で過ごして、夕方になった今弥生は眠りに落ちてる。

 もう起こして食事したら、空港に送らないと。
 明日仕事に行けるのかね、この人は。
 まぁ、変態の仕業なんだけど。

 今度会えるのはいつの日か。

 赤ん坊を本当に作ってみようか、そんな考えがよぎった。
 親父はさらに目尻を下げて喜ぶだろう。
 女史には殺され、いや、怒られんだろうなあ…
 涌井のニヤつく顔も思い浮かぶ。
 やっぱりダメだな、男として無責任過ぎる。

 離れてるから不安になることも、イラッとすることもある、お互いにだ。

 さっき、この部屋の合鍵の話を弥生に聞いた。

「合鍵は一人だけ、渡したよ」

 弥生の瞳が悲しげに揺れたから、すぐにそれは和乃さんだとネタばらしした。
 不安は会話して、一つづつ解消していくしかない。

 弥生が見た澤口の鍵は、知らぬ間に勝手に作った俺の部屋の合鍵か、それとも適当な二本を並べただけなのか分からない。
 正直に口を割るかも分からないし、念のため後で玄関の鍵は変えることにした。
 澤口は仕事はできるけど、もう不信感は拭えない。
 そんなことだから担当を変えてもらおう。
 できれば男に。

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