コガレル(番外編)~弥生ホリック~
聞けば夢ちゃんが、バレンタインにチョコレートを送ってくれたのだと言う。
そのお返しにジュエリーを贈りたいそうだ。
そっか、明日はホワイトデーだ。
「夢ちゃん、喜ぶだろうね」
「どうかな、真田さんみたいに高価な物は買えないから」
冬馬君が言ってるのは、今私の指に嵌められてる指輪のことだ。
去年、私の指のこれを見つけた夢ちゃんは、いかに高価な物かと編集部でこんこんと解説してくれた。
「そんなにするの?」
私は知らなかった。
世の女性が憧れてやまないジュエリーブランドで、その品質故に値段も張るものだと。
ちなみに、私の指輪のいじり癖はそこから加速した。
なくしてないか、常に気になってしまって。
そんな私達のやり取りを、冬馬君も傍らで大した興味もなさそうに眺めてたっけ。
「冬馬君から贈られるなら、どんなものだって喜ぶに決まってる」
幼馴染みの二人が、お互いに惹かれ合ってることは端から見てて分かってた。
それでも夢ちゃんは、写真家としての夢を追い掛ける冬馬君を止めることはしなかった。
もどかしい気もするけど、離れててもお互いを想い合ってるのが分かる。
いつもただ静観してる私まで、優しい気持ちになってしまう二人。
レインボーブリッジを渡り切ると、冬馬君は六本木にある商業施設の駐車場に車を停めた。
ここには有名な宝飾店の店舗がある。
冬馬君は私にアドバイスして欲しいと言ったから、一緒に車を降りることにした。